特殊相対性理論

の勉強のまとめ。
とかく物理の本は読み難い、行間が論理だけでは埋めきれないからと思われる。
以下、一般的な物理の教科書の記号には従わないので注意。


ニュートン力学とその問題点

座標系 S 上の時間 t における

  • 物体の質量を m(t)
  • 物体の位置を r(t)=\begin{bmatrix}r_1(t) & r_2(t) & r_3(t)\end{bmatrix}
  • 物体の速度を v(t)=\begin{bmatrix}v_1(t) & v_2(t) & v_3(t)\end{pmatrix}
  • 物体の加速度を a(t)=\begin{bmatrix}a_1(t) & a_2(t) & a_3(t)\end{pmatrix}
  • 物体の運動量を p(t)=\begin{bmatrix}p_1(t) & p_2(t) & p_3(t)\end{pmatrix}
  • 物体に働く力を f(t)=\begin{bmatrix}f_1(t) & f_2(t) & f_3(t)\end{pmatrix}

とすると、

  • v=\frac{dr}{dt}
  • a=\frac{dv}{dt}=\frac{d^2r}{dt^2}
  • p=mv
  • f=ma


座標系 S に対して相対的に等速運動している座標系(慣性系)を S' とする。
その移動速度を V=\begin{bmatrix}V_1 & V_2 & V_3\end{bmatrix} とし、時間 t=0 のときに SS' の原点が重なっているとすると、S' で時間 t に観測した物体の位置 r'、速度 v'、加速度 a' はそれぞれ、

  • r'=r-Vt
  • v'=\frac{dr'}{dt}=\frac{dr}{dt}-V=v-V
  • a'=\frac{dv'}{dt}=\frac{dv}{dt}=a

ニュートン力学では、物体の質量と物体に働く力は普遍的であると考える(らしい)ので、S' で観測した質量 m'、力 f' に対して、

  • m'=m
  • f'=f

となるから、S' でも運動方程式

  • f'=f=ma=m'a'

が成立する。
つまり S の座標 x=\begin{bmatrix}x_1 & x_2 & x_3\end{bmatrix}S' の座標 x'=\begin{bmatrix}x'_1 & x'_2 & x'_3\end{bmatrix} 間の x'=x-Vt 形式の座標変換(ガリレイ変換)に対して、物理法則(運動方程式)は普遍的に成立する。


ここで問題は2つ。

  1. 観測では電磁気学のマックスウェル方程式は座標系によらず成立するが、マックスウェル方程式はガリレイ変換で普遍的でない。
  2. マックスウェル方程式から、真空中の電磁波の速度は座標系に依らず一定で c となることが導ける。実際マイケルソン-モーレーの実験から、真空中の光の速度は座標系や光源の運動状態に依らず一定のようだが、ガリレイ変換では S で観測した速度 c の光は S' では速度 c-|V| となる。


ローレンツ変換

2の解決のために、SS' で光速が一定となるような座標変換を見出す。
t=0 の時に S の原点で発した光は、t 秒後には x_1^2+x_2^2+x_3^2=c^2t^2 を満たす点 \begin{bmatrix}x_1 & x_2 & x_3\end{bmatrix} に到達する。
t'=0 の時に S' の原点で発した光は、t' 秒後には x'_1^2+x'_2^2+x'_3^2=c^2t'^2 を満たす点 \begin{bmatrix}x'_1 & x'_2 & x'_3\end{bmatrix} に到達する。
よって、x_1^2+x_2^2+x_3^2-c^2t^2=x'_1^2+x'_2^2+x'_3^2-c^2t'^2が成立しないといけない。
また、S' における t' 秒時点の点 \begin{bmatrix}0 & 0 & 0\end{bmatrix} が、S における t 秒時点の点 \begin{bmatrix}V_1 & V_2 & V_3\end{bmatrix} に対応しないといけない。
なので単純に質点の座標だけを考えるとダメで、時間の変換も考える必要がある。
そこで、時間も含めた座標系(時空) \begin{bmatrix}ct & x_1 & x_2 & x_3\end{bmatrix} で考える、ただし便宜上時間は t ではなく ct で。
すると、関係式は次のようになり、この座標変換をローレンツ変換と呼ぶ。

  • \begin{bmatrix}ct'\\ x_1'\\ x_2'\\ x_3'\end{bmatrix} = \begin{bmatrix} \gamma & -\gamma\frac{V_1}{c} & -\gamma\frac{V_2}{c} & -\gamma\frac{V_3}{c} \\ -\gamma\frac{V_1}{c} & 1+(\gamma-1)\frac{V_1^2}{|V|^2} & (\gamma-1)\frac{V_1V_2}{|V|^2} & (\gamma-1)\frac{V_1V_3}{|V|^2} \\ -\gamma\frac{V_2}{c} & (\gamma-1)\frac{V_2V_1}{|V|^2} & 1+(\gamma-1)\frac{V_2^2}{|V|^2} & (\gamma-1)\frac{V_2V_3}{|V|^2} \\ -\gamma\frac{V_3}{c} & (\gamma-1)\frac{V_3V_1}{|V|^2} & (\gamma -1)\frac{V_3V_2}{|V|^2} & 1+(\gamma-1)\frac{V_3^2}{|V|^2} \end{bmatrix} \begin{bmatrix}ct\\ x_1\\ x_2\\ x_3\end{bmatrix} = \begin{bmatrix} \gamma\left(ct-\frac{V_1x_1+V_2x_2+V_3x_3}{c}\right) \\ x_1-\left(\gamma t-(\gamma-1)\frac{V_1x_1+V_2x_2+V_3x_3}{|V|^2}\right)V_1 \\ x_2-\left(\gamma t-(\gamma-1)\frac{V_1x_1+V_2x_2+V_3x_3}{|V|^2}\right)V_2 \\ x_3-\left(\gamma t-(\gamma-1)\frac{V_1x_1+V_2x_2+V_3x_3}{|V|^2}\right)V_3 \end{bmatrix}
  • ただし、|V|=\sqrt{V_1^2+V_2^2+V_3^2}\gamma=\frac{1}{\sqrt{1-|V|^2/c^2}}

ローレンツ変換は、速度 V が 光速 c に比べて十分小さいときは、ガリレイ変換とみなせる。

  • \begin{bmatrix}ct'\\ x_1'\\ x_2'\\ x_3' \end{bmatrix}=\begin{bmatrix}1 & 0 & 0 & 0\\ 0 & 1 & 0 & 0\\ 0 & 0 & 1 & 0\\ 0 & 0 & 0 & 0\end{bmatrix}\begin{bmatrix}ct\\ x_1\\ x_2\\ x_3\end{bmatrix}=\begin{bmatrix}ct\\ x_1-V_1t\\ x_2-V_2t\\ x_3-V_3t\end{bmatrix}


そしてこのローレンツ変換は1のマックスウェル方程式を普遍にする座標変換にもなっている、らしいがそれは知らん。


■固有時間

時空 S(ct, x_1, x_2, x_3) 内の点 (ct, x_1 ,x_2, x_3) を世界点、時空内の物体の軌跡 (x_1(t), x_2(t), x_3(t), ct) (t_1\leq t\leq t_2)世界線と定める。
また世界点間の距離を世界距離と呼び、\Delta s^2=\Delta x_1^2+\Delta x_2^2+\Delta x_3^2-c^2t^2 で定めると、\Delta s^2ローレンツ不変である。


位置が変わらず時間だけ経過したとき、その時間経過は \Delta t^2=-\frac{\Delta s^2}{c^2} となり、これもローレンツ不変となる。
よって \Delta\tau=\sqrt{-\Delta s^2/c^2}=\Delta t\sqrt{1-|v|^2/c^2} を物体の固有時間と定める。
ここで、|v|=\sqrt{(\Delta x_1/\Delta t)^2+(\Delta x_2/\Delta t)^2+(\Delta x_3/\Delta t)^2} は物体の速度であり、慣性系の速度と異なるので注意。


見方を変えて、運動している物体に対して瞬間的に静止している慣性系 S'(ct', x'_1, x'_2, x'_3) を考えると、S'S に対する相対速度は |v| であり、S' における物体の固有時間は \Delta\tau
\Delta\tauローレンツ不変だから、S における物体の固有時間も \tau となり、慣性系には依らない。


■相対論的運動量

ローレンツ変換は低速度下では近似的にガリレイ変換と見なすことができ、変換後の変数間で運動方程式が成立する。
しかし、一般の速度下では成立しない。
これは時間のパラメータ tローレンツ不変でないことが原因なので、時間と似た性質を持ちローレンツ不変な量である固有時間で考えてみる。


まず時空内の速度(4元速度) u=(u_0, u_1, u_2, u_3) を次で定める。

  • u_0=\frac{d(ct)}{d\tau}=\frac{d(ct)}{dt}\cdot\frac{dt}{d\tau}=\frac{c}{\sqrt{1-|v|^2/c^2}}
  • u_i=\frac{d(x_i)}{d\tau}=\frac{d(x_i)}{dt}\cdot\frac{dt}{d\tau}=\frac{v_i}{\sqrt{1-|v|^2/c^2}}


時空内での運動量(4元運動量) q=(q_0, q_1, q_2, q_3)、加速度(4元加速度) F=(A_0, A_1, A_2, A_3)、 力(4元力) F=(F_0, F_1, F_2, F_3) は次で。

  • q_0=mu_0=\frac{mc}{\sqrt{1-|v|^2/c^2}}
  • q_i=mu_i=\frac{mv_i}{\sqrt{1-|v|^2/c^2}}
  • A_0=\frac{du_0}{d\tau}=\frac{1}{c(1-|v|^2/c^2)^2}\sum_{j=1}^{3}v_ja_j
  • A_i=\frac{du_i}{d\tau}=\frac{v_i}{c^2(1-|v|^2/c^2)^2}\sum_{j=1}^{3}v_ja_j+\frac{a_i}{(1-|v|^2/c^2)
  • F_0=\frac{dq_0}{d\tau}
  • F_i=\frac{dq_i}{d\tau}


でこの F に関する運動方程式ローレンツ不変となる。


ニュートン力学的力という意味で、f=(f_0, f_1, f_2, f_3) を次のように定める。

  • f_0=\frac{dq_0}{dt}=mc\frac{d}{dt}\left(\frac{1}{\sqrt{1-|v|^2/c^2}}\right)
  • f_i=\frac{dq_i}{dt}=m\frac{d}{dt}\left(\frac{v_i}{\sqrt{1-|v|^2/c^2}}\right)

速度 |v|c より十分小さい場合は、f_0=0f_i=ma_i となり、古典的な意味でのニュートン力と一致する。

この fF の関係は、

  • F_0=\frac{dq_0}{d\tau}=\frac{dq_0}{dt}\cdot\frac{dt}{d\tau}=\frac{f_0}{\sqrt{1-|v|^2/c^2}}
  • F_i=\frac{dq_i}{d\tau}=\frac{dq_i}{dt}\cdot\frac{dt}{d\tau}=\frac{f_i}{\sqrt{1-|v|^2/c^2}}


E=mc^2

q_0^2-q_1^2-q_2^2-q_3^2=m^2c^2 なので、その両辺を \tau微分して 2q_0F_0-2\sum_{i=1}^{3}q_iF_i=2q_0\frac{dq_0}{d\tau}-2\sum_{i=1}^{3} q_i\frac{dq_i}{d\tau}=\frac{d}{d\tau}\left(q_0^2-\sum_{i=1}^{3}q_i^2\right)=\frac{d(m^2c^2)}{d\tau}=0 となり、\frac{d(cq_0)}{d\tau}=cF_0=\sum_{i=1}^{3}v_iF_i を得る。


ここで、ニュートン力学では速度と力の内積は仕事率であるから、\sum_{i=1}^{3}v_iF_i は物体に対する仕事率、すなわち単位時間あたりのエネルギー増加率と考えられる。
とすると、cq_0=\frac{mc^2}{\sqrt{1-|v|^2/c^2}} は物体のエネルギーと考えられる。
これを E と書くと、2項定理 (1+x)^n=1+nx+\cdots から、E=mc^2(1-|v|^2/c^2)^{-\frac{1}{2}}=mc^2+\frac{1}{2}m|v|^2+\cdots となる。
速度 |v|c より十分小さい場合は E=mc^2+\frac{1}{2}m|v|^2、速度 |v|0 でも E=mc^2 のエネルギーを持つ。