代数幾何(スキーム前)

をある目的に使いたいので、事実を羅列しておく、記号は標準的教科書と若干変えてるので注意。



■アフィン代数的集合

k を体、\vec{X_n}=X_1,\cdots,X_n とする。

S\subset k[\vec{X_n}] に対して、V(S)=\{p\in k^n | \forall f\in S. f(p)=0\}S が定めるアフィン代数的集合という。

  • n=1 のときの代数的集合は、 k\emptyset、有限集合、のいずれかになる。
  • 体はネーター環であるから、アフィン代数的集合 V は有限個の多項式 f_1,\cdots,f_s\in k[\vec{X}] を用いて V=V(f_1,\cdots,f_s) と書ける。

■定義イデアル

アフィン代数的集合 V\subset k^n に対して、I(V)=\{f\in k[\vec{X_n}]\,|\,\forall p\in V.f(p)=0\}V の定義イデアルという。

  • アフィン代数的集合 V\subset k^n に対して、V(I(V))=V

★以降 k代数的閉体とする。

  • Hilbertの弱零点定理: k[\vec{X_n}] の極大イデアルは、一点集合の定義イデアル I(\{p\})=(X_1-p_1,\cdots,X_n-p_n)p=(p_1,\cdots,p_n)\in k^n の形でかける。
  • Hilbertの零点定理: イデアル I\subset k[\vec{X_n}] に対して、I(V(I))\subset\sqrt{I}
  • V がアフィン代数的集合 ⇔ I(V) が根基イデアル

■Zariski位相

  • アフィン代数的集合を閉集合とする位相が k^n に入り、これをZariski位相という。
    • V(\langle 0\rangle)=V(\{0\})=k^n
    • V(\langle 1\rangle)=V(k[\vec{X_n}])=\empty
  • k^n-V(f_1,\cdots,f_s)=(k^n-V(f_1))\cup\cdots\cup(k^n-V(f_s)) であるから、Zariski位相の開集合は開基 k^n-V(f)f\in k[\vec{X}] の有限和となる。
  • Zariski位相は、1点集合を閉集合とし、多項式関数 k[\vec{X_n}]\ni f:k^n\rightarrow k が連続となるような最弱(開集合・閉集合が少ない)の位相となる。

■アフィン代数多様体

アフィン代数的集合 V が、真部分代数的集合 V_1, V_2\subset V の和 V_1\cup V_2 で書けるとき V は可約であるという。

また書けないとき V は既約といい、既約なアフィン代数的集合をアフィン代数多様体という。

  • アフィン代数的集合は、有限個のアフィン代数多様体の和として一意に書ける。

■座標環

アフィン代数的集合 V\subset k^n に対して、k[V]=k[\vec{X_n}]/I(V)V の座標環という。

  • k[V]V 上の k多項式関数全体から成る環とみなせる。ようは、I(V) 上で同じ値をとる多項式を、同じ多項式関数を定義する多項式だとして同一視した環。
    • f,g\in k[\vec{X_n}] に対して、\forall p\in V.f(p)=g(p) なら、\forall p\in V.f(p)-g(p)=0 なので、f-g\in I(V)となり、同じ剰余類に含まれる多項式V 上で同じ多項式関数を定める。
    • 多項式 X_i の同値類 [X_i]p\in Vp の第i成分を対応させる座標関数とみなせる。
    • k[V] は 座標関数 [X_1],\cdots,[X_n]k代数、即ち [X_1],\cdots,[X_n] の和とkスカラー倍で閉じた環となる。

■正則写像

アフィン代数多様体 V\subset k^nW\subset k^m に対して、写像 \varphi:V\rightarrow W\varphi(a)=(f_1(a),\cdots,f_m(a)),\,f_i\in k[V] で定め、正則写像という。

  • g(\vec{X_m})\in k[W]g\circ\varphi(\vec{X_n})=g(f_1(\vec{X_n}),\cdots,f_m(\vec{X_n}))\in k[V] を対応させる写像 \varphi^*(g)=g\circ\varphik[W] から k[V] への k 上の環準同型となる。

正則写像 \varphi:V\rightarrow W\psi:W\rightarrow V があって、\varphi\circ\psi={\rm id}_W\psi\circ\varphi={\rm id}_V となるとき、これら写像を双正則写像といい、VW は双正則同値という。

  • VW が双正則同値 ⇔ k[V]k[W]k 上同型

■関数体

アフィン代数多様体 V に対して、k[V] の商体 k(V)=\{g/h\,|\,g,h\in k[V],\,h\not=0\}V の関数体という。

  • I(V) は素イデアルであるから、k[V] は整域となり、商体は存在する
  • k(V) の元は、V 上の有理関数全体から成る体とみなせる。
    • f_1=g_1/h_1,\,f_2=g_2/h_2 が開集合 U_1,\,U_2 で定義されているとき、開集合 U_0\subset U_1\cap U_2 に対して \forall.p\in U_0.f_1|_{U_0}(p)=f_2|_{U_0}(p) なら、\forall p\in U_0.g_1(p)h_2(p)=g_2(p)h_1(p) なので、g_1 h_2 - g_2 h_1\in I(V) となり、f_1f_2 は同じ有理関数をとなる。
    • g_1/h_1,\,g_2/h_2 が有理関数として等しくても、h_1(p)=0,\,h_2(p)\not=0 となることもあるので注意。
  • f\in k(V) の定義域は開集合で \bigcup\{V-V(h)\,|\,f=g/h\} となる。

■有理写像

アフィン代数多様体 V\subset k^nW\subset k^m に対して、写像 \varphi:V\rightarrow W\varphi(a)=(f_1(a),\cdots,f_m(a)),\,f_i\in k(V) で定め、有理写像という。

  • \varphi の定義域は、\cap_i{\rm dom}(f_i) となる
  • g(\vec{X_m})\in k(W)g\circ\varphi(\vec{X_n})=g(f_1(\vec{X_n}),\cdots,f_m(\vec{X_n}))\in k(V) を対応させる写像 \varphi^*(g)=g\circ\varphi は、k(W) から k(V) への k 上の準同型となる

有理写像 \varphi:V\rightarrow W\psi:W\rightarrow V があって、\varphi\circ\psi={\rm id}_W\psi\circ\varphi={\rm id}_V となるとき、これら写像を双有理写像といい、VW は双有理同値という。

  • VW が双有理同値 ⇔ k(V)k(W)k 上同型
  • 双正則なら双有理だが、逆は一般には成り立たない。

■局所環

p\in V で正則な(=定義された)有理関数全体から成る整域 O_V(p)=\{g/h\,|\,g,h\in k[V],\,h(p)\not=0\}\subset k(V)p における V の局所環という

  • k[V]=\cap_{p\in V} O_V(p)
  • 開集合 U\subset V に対して、O_V(U)=\cap_{p\in U} O_V(p)U で正則な有理関数から成る環となる。

■層

開集合 U\subset V に対して局所環 O_V(U) を割り当てる写像 O_V は次の環の前層の定義を満たす。

  • O_V(\emptyset)=\{0\}
  • 開集合 U_1\subset U_2\subset V に対して、環準同型 r_{U_2,U_1}:O_V(U_2)\rightarrow O_V(U_1) を制限写像 r_{U_2,U_1}(f)=f|_{U_1} で定めるとするとき、
    • 開集合 U_1\subset U_2\subset U_3\subset V に対して r_{U_2,U_1}\circ r_{U_3,U_2}=r_{U_3,U_1}

さらに次の環の層の定義も満たす。

  • \{U_i\,|\,i\in I\} を開集合 U\subset V開被覆とするとき、f,g\in O_V(U) に対して、\forall.if|_{U_i}=g|_{U_i} ならば f=g
  • \{U_i\,|\,i\in I\} を開集合 U\subset V開被覆とするとき、f_i\in O_V(U_i)\,(i\in I) に対して、\forall i,j. f_i|_{U_i\cap U_j}=f_j|_{U_i\cap U_j} ならば \forall i.f|_{U_i}=f_i となる f\in O_V(U) が一意に存在する

p\in V とし、p の開近傍 U\subset Vf\in O_V(U) の組 (U,f) に次の同値関係を入れる

  • (U_1,f_1)\sim(U_2,f_2)p の開近傍 U_3\subset U_1\cap U_2f_1|_{U_3}=f_2|_{U_3} となるものがある

この同値関係による同値類全体を p における O_V の茎 O_V(p) といい、O_V(p) の元を p における O_V の芽という。

  • p における O_V の茎 O_V(p) は、p における V の局所環、つまり p で正則な有理関数全体から成る環

層、茎、芽は次のイメージで(私は)捉える。

  • 多様体 V 上の点 p の法線を茎、法線に交わるように書いた(=p で正則)関数それぞれがを芽(というか枝)
  • 開集合 U\subset V 内の点 p\in U の分だけ茎を集めて束にしたのが O_V(U)

sheafの一般的訳って「束」だけど、既にlatticeの数学的訳を束としちゃってたのと、sheafが長ネギのような層構造にみえるから、sheafの数学的訳を「層」とした?



■前代数多様体

X位相空間F_0X の開集合 UU 上の k 値関数全体を割り当てる層、FF_0 の部分層(つまり、F(U)F_0(U) の部分環となる層)とするとき、次を満たす組 (X,F) を前代数多様体という。

  • (U_i,F|_{U_i}) に対して、アフィン代数多様体 V_i が存在して、U_iV_i が位相同型で、その同型写像が層 F|_{U_i} を層 O_{V_i} へ写す

代数多様体 (X,F_X) から (Y,F_Y) への正則写像とは、次を満たす連続写像 \varphi:X\rightarrow Y のこと。

  • 任意の x\in Xf\in O_Y(\varphi(x)) に対して、f\circ\varphi\in O_X(x)